「殿様! 殿様!」 「アイ〜ン! アイ〜ン!」

「殿様! 殿様!」

安否を気づかって駈けよろうとしましたが、と見てそのとき――、

「ざまアみやがれッ。命さえ貰って了えばもう用はないわッ」

棄て白(せりふ)を残しつつ、不逞の非人が、逸早く逃げ延びようとしかけたので、事は先ず対手を捕えるが急! 京弥のふと心づいたのは手裏剣(しゅりけん)の一手です。

「卑怯者めがッ、待てッ」

呼びかけるとその右手に擬したるは小柄(こづか)。

「命知らずめッ。うぬも見舞ってほしいか」

振り返ると非人がまた右手に種ガ島を擬しました。


一個は大和(やまと)ながらの床しい手裏剣! 他は南蛮渡来(なんばんとらい)の妖(あや)しき種ガ島――茲に緩急(かんきゅう)、二様の飛び道具同士が、はしなくも命を的に優劣雌雄を決することに立到りましたが、勿論、これは贅言(ぜいげん)を費す迄もなく、その武器の優劣と言う点から言えば、手裏剣よりも短銃に七分の利がある筈でした。けれども、いざその雌雄を争う段となれば、事はおよそ命中率の問題です。


命中率の問題とならば言う迄もなく武器を使用するものの手練と技が結果を左右する筈なので、いかさま怪しの非人には、七分の利ある種ガ島があるにはあったが、それと同様に、否、むしろそれ以上に京弥にはまた、技の冴えと手練の敏捷さがありました。